11月8日 夕方 石鹸のお兄ちゃん
宮崎夏次系という漫画家を知っているだろうか。知らない人は検索してみてほしい。
こういう絵のタッチで、心の柔らかいところにさわってくるような物語を描く漫画家さんがいる。
それが宮崎夏次系さんだ。
この人の作品は行き詰まってる時に読みたくなるものが多い。弱さの肯定というわけではないんだけど、伝わらなさ とか 不器用さ とかそういうものが報われる瞬間があって、個人的には上手くいかないときに読みたくなる。
上にAmazonのリンク貼った『僕は問題ありません』は、高校生向けにオススメの本という取材を受けた際、紹介した1冊でもある。
多分電子じゃなくて、手元に置いておきたくなるような本なので、気になった人は買ってみてほしいな。ヴィレバン行けば大体置いてあるから。
紹介はこんなところにしておいて、石鹸のお兄ちゃんの話をしよう。
石鹸のお兄ちゃんとは
宮崎夏次系『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』の『石鹸』という短編に登場する主人公のお兄ちゃんのことである。
この短編をはじめた読んだのは、高校生の頃だった。当時は石鹸のお兄ちゃんに対してそこまで大きな感情を抱くことはなかった。
不器用で、何をやるにもベクトルがちょっと変で、毎日苛々している石鹸のお兄ちゃん。
22を迎えた今読むと正直刺さるものがある。
イデアを求めることと社会で生きていくことの塩梅について思う。これはすごく難しい。本当は自分にとってどちらも大事なことだとわかっているのに、片方を蔑ろにしたり、片方ばかりを追求しようとする。
多くの人はこの関係に、なんとか折り合いをつけるだろう。
石鹸のお兄ちゃんは、折り合いをつけられない人だ。自立している人物ではない。
社会にとって、役に立っていないと見なされてもおかしくない。
そんな石鹸のお兄ちゃんは、果たして社会から切り離されるべき存在なのだろうか。
自分は頑張れと思った。頑張れと思って、涙が出た。
気になった人は是非、作品を一読してみてほしい。
語調が急に強くなるが、絶対に損させないと約束する。