小麦粉惑星

誰かいつもマーガリン潰してる。

ぼくらはみんな化け物

 俺は許容範囲が広めというか、嫌いになるものがかなり少ないというか、あんまり人を嫌いになることが無いなぁって思いながら、20年間生きてるんですよ。ほんと、キャッチャーミットがデカイのか、鈍感なのか分かんないですけど。鈍感では無いですね、こういうブログをやっている時点で、敏感だよな。

 お酒飲んで、女性殴ったみたいなニュースあったじゃないですか。あれは絶対良くないことというかまあ犯罪ですよね。でも彼は法で裁かれるなり、被害者の女性に謝罪、慰謝料払うみたいなことをするわけで。外野がどんな感想を持ったところで、だから?って話じゃないですか。それって当人同士というか、まあ勤務している、所属している、応援している色々な人に迷惑はかかってるかもしれないですけど。攻撃の対象にしていいのかって言われるとまた違うよなって。嫌だなあって思います。

 お酒関係の事件が起こったときに、「酒が人をダメにするんじゃない、元々ダメな人を酒が暴く」云々の貼り紙の画像で説教する人がすごく苦手で。誤解してほしくないから、ちゃんと書くんですけど、説自体は的を得てると思うし、確かにな、最初に思いついた人は上手いこと考えたなと凄いなって感じました。

全然話変わるんですけど、ここ1年半くらい俺は山本直樹の漫画にハマってて。キャラクターを描くんじゃなくて、人を描いてる感じが好きで。特に短編が好きなんですけど、キャラクターの名前とかは全然覚えられなくて、描写とか内容は覚えてるのに、何故かキャラクターの名前が覚えられない。俺結構物覚えとか名前覚えるの得意なはずなんだけどな。多分この理由に、俺が山本直樹が描く人間に圧倒的な他者性を感じているからなのかなと思います。満員電車乗ってて、目の前に他人の顔面あっても、電車降りたら忘れちゃうでしょ、あれと似てるなって感じ。関わってない人間のことって案外どうでもいいんですよ。気にも止まらない。ふらふらの酔っ払いが駅前で寝てて、その場では強烈な印象を与えていても、その人の明日とか明後日とか、みんながみんな考えますか?

 山本直樹が描く女性って、可愛すぎないのがいいなって思ってて、大体友達の彼女にいそうなくらいの顔。友達の彼女って基本的に他人じゃないですか。アヤちゃんだろうが、サオリちゃんだろうがなんだろうが「友達の彼女」でしかない、知り合いと他人の境目に突っ立ってるような立場の人間で。

 そして、山本直樹が描く男性って全然かっこよくない、大体何かしら顔に癖があって、イケメンなんて滅多に出てこないんですよ。みんな中の下くらいの顔をしている。現代に実写映画化とかしても、菅田将暉は絶対キャスティングされないですね。で、短編だとどの話でもほぼ性交するんですよ、めちゃ性交。その上たまに暴力、暴力みたいな、これだけ聞くと俺が頭おかしいみたいですけど、まじでそうなんです。あとエモいなんて表現一生できないくらい心臓に来るんですよ。心臓の内側外側をひっくり返して、中学校のぬるい水道でじゃぶじゃぶ洗ってるみたいな感じ。黒板消しクリーナーの中の袋って洗ったことあります?全然綺麗にならないから何回も水入れて洗うんですよ、ひさびさに思い出したな、黒板消しクリーナーのこと。

 みんな欲望とかコンプレックスがあって、それを吐き出したいと思ってる。言わなくてもどっかで思ってる。うまく吐き出せる人と、間違った吐き出し方をずっと続ける人がいる。黒板消しクリーナーの中の袋は、いくら洗っても汚れてしまって、洗えば磨耗して、それは心と似ていて、それを山本直樹は痛くなるほど鮮明に描いてる。

 俺は、みんな一人ひとり、心に化け物とか悪魔を飼ってるってずっと考えていて、人それぞれ大小は違っていても、なにかしら飼っているだろうと思っている、自分も他人も。でも、人をネットやらなんやらで攻撃する人って間違いをおかした人を「お前は悪魔だ、赦されない!」ってめためたに刺すでしょ。魔女狩りの再現か?道徳の時間何してた?『デビルマン』読んだ方がいいよ。その上、自分は化け物とは関係ないみたいな顔で、口ぶりで攻撃するじゃないですか。人を傷つけた時点で化け物が外に現れてしまっていると思う。それが悪意からなのか正義感からなのかは全く関係なくて、それはあなたが飼っている一種の悪魔で、化け物だって認めて欲しい。願望欲望エゴコンプレックス煮詰まって生まれた悪魔だよ。化け物で、分身だよ。人を傷つけるだけなんて、悲しいだけだよ。心に悪魔がいれば、きっと天使だっているよ。間違っちゃった人にも、笑顔にしたかった人、大切にしたかったものがあったはずだよ。